UVセンサとCOVID-19との闘い

By: Dr. Yakov Roizin    |   March 15, 2022   |   Category: Technology 

UVライトを使った殺菌は1世紀以上前から知られています。1903年、Niels Ryberg Feinsenが、感染症病原体を抑制するために、紫外線の「ケミカルライト」を使用したことでノーベル賞を受賞しました。紫外線照射による滅菌は、過去数十年にわたり広く使用されてきました。紫外線照射は、空気中、水中および様々な表面の危険な微生物を除去するのに非常に効率的です。Covid‐19パンデミックは、UV光を殺菌に使用することへの更なる関心を呼び起こしました。紫外線がウイルス、特にSARS-CoV-2を効率的に死滅させることが、いくつかのグループによって再確認されました。UVB (波長:320-280nm)とUVC (波長:200-280nm)はCovid‐19のRNAを破壊し、260nmより短い波長のUVCはCovid‐19ウイルスの蛋白質被覆に損傷を与えます。報告されている99.9%~99.99%の殺菌に必要なUV放射線量は、UVB/UVCの波長、表面の特性および特定の環境にもよりますが、数~数百mJ/cm2の範囲となっています。Covidウイルスの滅菌のために、殺菌用水銀ランプ、UVC LEDおよび各種UV照射システムの需要が高まりました。

滅菌分野における最近の革新の多くは、UVC/UVB放射線のパラメータを測定するためのデバイスおよび照射装置に統合された他のタイプのセンサに焦点を当てています。殺菌するときには、処理された表面が滅菌に十分な線量を受けていることを保証する必要があります。コート、保護マスク、スマートフォン、紙幣などの身の回りのものは、一般的に人々に危険のない密閉された殺菌装置に入れることができます。また、空調や水照射システムに紫外線源を装備している場合も同様です。ただし、人がいるオープンスペースで消毒を行う場合は十分に注意する必要があります。UVセンサによって、照射が行われる部屋、車、飛行機の客室などにいる人々の安全のために、UV線量を監視する必要があります。UVC/UVB消毒システムには様々なタイプのセンサが必要です。ハンドヘルド型UVCソースを使用する場合、安全性を実現することは困難です。携帯用UVC殺菌装置は、航空機の客室や車の消毒用に普及し、すでに数社の航空会社や自動車レンタカー会社で使用されています。殺菌が本当に成功したことをどのように制御し、保証できるかということが課題です。殺菌の効率を保証するためには、特定の場所で紫外線の線量を測定する必要があります。スマートUVモニタリングは、このようなセンサを多数使用することを可能にします。多くの場合、それらをワイヤレスセンサネットワークの要素として使用することが望まれます。

設置例を図1に示します。RFIDタグと一体化したUVセンサは、飛行機のキャビン内でCOVID滅菌の状況を管理するために使用されます。高濃度のウイルス付着が予想される位置に設置された個々のセンサは、UVC照射の線量を測定します。 RFIDリーダーは、RFID対応センサから送信された情報を収集し、殺菌手順が完了したことを確認します。 適切なセンサは、UVC / UVBに対する感度と、UVに対する可視光線の除去率が高い(殺菌される環境下での可視光に対する感度が低い)必要があります。 ほとんどのRFIDシステムと同様に、消費電力とセンサコストも重要な制約条件です。

Fig. 1 – UV sensors in the cabin of an airplane, as a part of UVC sterilization system

UVC/UVBセンサは、他の多くのアプリケーションでも必要となっています。新しいアプリケーションの一つとして「オゾンホール」の診断があげられます。大気中のオゾン層破壊の影響により地表レベルの紫外線放射量が増加しており、重要性が増加しています。スペクトルのUV領域で感度の高いソーラーブラインド光検出器は、窒化ガリウムや炭化ケイ素のような化合物半導体材料を用いて製造することができます。これらの材料はバンドギャップが広く(3.4eV以上)、可視光に鈍感な特徴があります。一部の殺菌アプリケーションで、特に1つまたは少数のセンサ(例えば、劣化度合いを管理するためのUVCソースの電力を監視するセンサ)が必要な場合、化合物材料によるUVセンサが多く用いられています。しかし、対応するデバイスはかなり高価であり、信号処理や通信のためのシリコン系のデバイスとの複雑な集積化が必要です。シリコンをベースとするUVセンサが、特に複数のセンサを必要とする滅菌システムにおける、言及された用途の大部分に好ましいことは明らかです。バルクシリコンUVセンサには、市場にいくつかのタイプがあります。UV計測は、多くの場合、紫外線と可視光の両方に反応するシリコンデバイスと、可視感度のみのリファレンスセンサとを組み合わせることによって実現されます。リファレンスセンサは、バックグラウンドの可視光および正規化後の対応する信号を全信号から差し引くために用いられます。この場合、実装は、別個のチップ上にリファレンスセンサを有するシステムで行われ、統合されたソリューションを必要とします。このようなアプローチの主な欠点は、可視光成分を抑制することが困難であり、これにより、UV選択性が低下することにあります。

有望なアプローチは、数百オングストロームの厚さを有するシリコン検出層を使用することです。このようなデバイスは、SOI(Silicon on Isolator)ウェハ上に構築されます。非常に薄いSi層は可視光とIR光に対してほとんど透明な状態となり、光の中のUV成分はこれらのSi層に効率的に吸収されます。計測は、SOIのデバイス層に形成された横方向のPINダイオードによって実施されます。タワーセミコンダクターは、UVCにおいて高い応答性を有するとともに、UVB/UVA、可視光およびIR光の感度抑制を高くしたいくつかの新しいUVセンサを開発しました。対応するソリューションには、SOI上の薄いシリコン層のデバイスとフローティングゲート(FG)UVセンサが含まれます。これらのソリューションにより、直列に接続されたPINラテラルダイオードを含むセンサによって生成される電圧は、小さなデバイス面積を維持しながら、照射下で数十ボルトに達することができます。標準的なCMOS とUVC透過金属間およびパッシベーション絶縁膜を組み合わせることで、UVCに対する高い感度が実現されます。255~280nmで0.1A/Wを超える応答が実証され、これは現在市場に出ているセンサで達成されたものより10倍以上の性能になります。これらのセンサは、同一チップ上に集積された該当する電子機器を有するSoCとして製造されています。

タワーが開発し、標準的なCMOSプロセスフロー(SOIではなくバルクシリコン)にうまく統合され、製造時に追加のマスクを必要としない別のタイプのセンサは、フローティングゲートの原理に基づいています。図2は、同社が開発したC-Flash NVMの一つであるソーラーブラインドグリルCセンサのUVC(255nm)感度を実証したものです。

Fig. 2 demonstrates UVC (255nm) sensitivity of a solar-blind Grilled C-sensor, one of the flavors of C-Flash NVM developed in the company.

 Fig. 2  a
Fig. 2 a) The decrease of the FG device threshold voltage as a function of time for several flavors of Tower Semiconductor single Poly NVM, including Griledl C-Sensor, specially developed for UVC measurements.
Fig. 2  b
Fig. 2 b) Grilled sensor design

STI(Shallow Trench Isolation)上にポリシリコンのストライプとして形成されたフローティングゲートはトンネル注入によって帯電し、UVC光子によって放電されます。標準のFG NVMと比較して静電容量が小さく、フローティングゲートの周囲長が長いため、放電効率が大幅に向上します。このようにUVC殺菌用途に実用的な感度が達成されます。デバイスは最大1万回まで充放電を繰り返すことができます。

Marketsandmarketsによると、UV殺菌装置の市場規模は、2021年の推計48億ドルから2026年までに92億ドルに達すると予測されています。新しい殺菌技術は、多数のUVセンサを必要とし、迅速かつ手頃な価格でなければなりません。現在、UVC照射システムに焦点が当てられています。205nm~220nmの範囲は人間の目にとって危険性が低いと考えられており、さらに高い消毒効果が期待されるため、研究者らは255nmよりもさらに短い波長を研究しています。

タワーセミコンダクターで開発されたシリコンUVセンサは、Covid-19やその他の新たに出現しつつある脅威に対抗するUV殺菌システムにおける重要な要素の1つであります。

Dr. Yakov Roizin

Director of Emerging Technologies & Fellow

Dr. Roizin was named Tower Semiconductor Fellow, the Company’s highest technical honor, and appointed as Director of Emerging Technologies in 2010. Currently, he is working on Tower Semiconductor roadmap R&D projects and coordinating interaction with Tower Semiconductor research partners in the semiconductor industry and in academia. Dr. Roizin has served with Tower Semiconductor in various positions since 1997. Prior to his current position, he held engineering and managerial positions in Tower Semiconductor R&D departments. During his career, he supervised the development of different types of semiconductor devices, including non-volatile memories and sensors for embedded CMOS technologies.

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